眠れない夜をお過ごしのことでしょう。
会社の将来を想い、従業員の顔を思い浮かべ、夜中に一人で通帳を眺めては深いため息をつく。
銀行の担当者に頭を下げ、事業計画を何度も練り直し、それでも「申し訳ありませんが…」と冷たい言葉を返される。
その悔しさ、無力感、そして孤独。
お気持ち、痛いほどわかります。
何を隠そう、私自身がそうでしたから。
はじめまして。
資金繰りコンサルタントの山崎 譲と申します。
かつて私は、父から継いだ金属加工会社を経営していました。
しかし、リーマンショックの煽りで経営危機に陥り、メインバンクからも見放され、倒産の淵を彷徨った経験があります。
万策尽きた、と会社のシャッターの前で崩れ落ちたあの夜。
藁にもすがる思いで飛び込んだのが、今回お話しする「ファクタリング」でした。
この記事は、単にファクタリングの仕組みを解説するためだけのものではありません。
あの時の私のように、銀行に「NO」を突きつけられ、絶望の淵に立たされている社長のあなたへ。
「大丈夫。道は、一つじゃありませんから」
そのことをお伝えするために、私の経験のすべてを注ぎ込んで執筆します。
最後までお読みいただければ、なぜ銀行がダメでもファクタリングなら可能性があるのか、その「本当の理由」が腑に落ちるはずです。
そして、明日へ向かうための具体的な一歩が見つかることを、お約束します。
目次
絶望の宣告…なぜ銀行は、あれほど頼りにしていたのに「NO」と言うのか?
長年付き合いがあり、何度も助けてもらったはずの銀行。
会社の生命線だと信じていたのに、なぜ、最も苦しいこのタイミングで手を差し伸べてくれないのか。
そう思われていますよね。
私もそうでした。
裏切られたような気持ちにさえなりました。
しかし、彼らには彼らの、動かせない「ルール」があるのです。
銀行が見ているのは「会社の過去」です。〜決算書と信用情報という名の通信簿〜
銀行が融資の審査で最も重視するもの。
それは、あなたの会社の「過去の実績」です。
具体的には、過去数年分の決算書や確定申告書、そして信用情報機関に登録された情報。
これらは、いわば会社の「通信簿」のようなものです。
赤字が続いていたり、税金の支払いが遅れていたりすると、通信簿の評価は著しく下がります。
銀行は「この会社に貸したお金は、本当に返ってくるのだろうか?」という視点でしか見ません。
あなたの事業への情熱や、将来の可能性をどれだけ熱く語っても、通信簿の評価が低ければ、彼らの心を動かすのは極めて困難なのです。
彼らが求めるのは「100%の安心」。〜担保・保証人という名の保険〜
銀行は、リスクを極端に嫌います。
彼らにとっての融資は、あくまで「安全な投資」でなければなりません。
そのため、通信簿の評価が少しでも芳しくなければ、必ず「保険」を求めてきます。
それが、不動産などの「担保」や、経営者個人の「保証人」です。
万が一、会社が返済できなくなったとしても、担保を売却したり、保証人に請求したりすれば、貸したお金を回収できる。
その「100%の安心」がなければ、彼らは決して首を縦に振ってはくれないのです。
私がメインバンクに突き放された、あの雨の日の記憶
今でも忘れられません。
主要取引先が倒産し、連鎖的に資金繰りが悪化したあの日。
私は雨の中、震える手でメインバンクのドアを開けました。
何時間もかけて作り上げた改善計画書を手に、担当者に必死で頭を下げました。
「この融資さえあれば、必ず立て直せますから!」と。
しかし、返ってきたのは非情な言葉でした。
「山崎さん、決算内容も悪化していますし、これ以上の担保もありません。申し訳ありませんが、今回の融資は…」
銀行を出て、会社のシャッターの前で一人、膝から崩れ落ちました。
従業員の顔、家族の顔が浮かび、涙が止まりませんでした。
「もう、終わりだ」と。
銀行という道が完全に閉ざされた瞬間でした。
視点を変えれば道は拓ける。ファクタリング審査の”主役”はあなたではない
銀行に「NO」と言われた社長の多くが、私と同じように「もう打つ手がない」と思い込んでしまいます。
しかし、それは違います。
銀行融資という「一つの物差し」で測られた結果に過ぎないのです。
ファクタリングは、銀行とは全く異なる物差しで、あなたの会社を見てくれます。
その最大の違いは、審査の「主役」が誰か、という点にあります。
根本的な違い①:「融資」ではなく「売買」という全く別の取引
まず大前提として、銀行融資は「借金」です。
お金を借りて、利息を付けて返す「融資契約」です。
だからこそ、借りる側の「返済能力」が厳しく問われます。
一方で、ファクタリングは「売掛金の売買」です。
あなたの会社が持っている「請求書(売掛金)」を、ファクタリング会社に買い取ってもらう「売買契約」なのです。
これは借金ではありません。
資産の売却です。
だから、あなたの会社の返済能力は、原則として問われないのです。
根本的な違い②:審査の主役はあなたの会社ではなく「売掛先」
ここが最も重要なポイントです。
銀行融資の審査の主役は、お金を借りる「あなたの会社」でした。
しかし、ファクタリングの審査の主役は、あなたが請求書を送っている「売掛先の会社」なのです。
ファクタリング会社が知りたいのは、たった一つ。
「この請求書のお金は、期日通りに本当に支払われるのか?」ということです。
そのため、あなたの会社の経営状況よりも、売掛先の会社の経営状況や支払い能力を重視して審査します。
つまり、あなたの会社が赤字決算であろうと、税金を滞納していようと、債務超過に陥っていようと関係ありません。
信用力の高い、優良な売掛先からの請求書さえ持っていれば、資金調達できる可能性が十分にあるのです。
【たとえ話】銀行融資は「マラソン選手(あなた)の体力審査」、ファクタリングは「バトン(売掛金)の強度チェック」
少し、たとえ話をさせてください。
銀行融資は、マラソン大会に出場する選手の「体力審査」のようなものです。
「この選手(あなたの会社)は、42.195kmを完走できる体力(返済能力)があるだろうか?」と、過去の記録(決算書)や健康状態(財務状況)を厳しくチェックされます。
一方、ファクタリングは、リレーで使われる「バトンの強度チェック」に近いかもしれません。
ファクタリング会社は、次の走者(売掛先)に渡すバトン(売掛金)そのものを見ています。
「このバトンは、途中で折れたり壊れたりせず、確実に次の走者に渡るだろうか?」と。
たとえ、バトンを渡すあなた(申込者)が少しバテていたとしても、バトン自体が頑丈で、次の走者(売掛先)がしっかりした優良企業であれば、取引は成立するのです。
このように、見ている場所が全く違う。
これが、銀行がNOでもファクタリングなら可能性がある、根本的な理由なのです。
これが審査の核心!ファクタリング会社が見ているたった3つのポイント
では、ファクタリング会社は具体的に何を見ているのでしょうか。
難しい話ではありません。
彼らが見ているのは、突き詰めれば以下の3つのポイントです。
ポイント1:【売掛先の信用力】「本当にこの会社は支払ってくれるのか?」
最も重要なのが、売掛先の信用力です。
上場企業や官公庁、あるいは長年安定した経営を続けている優良中小企業など、支払い能力が高いと判断されれば、審査は非常に通りやすくなります。
逆に、設立間もない会社や、経営不振の噂がある会社、個人事業主などが売掛先の場合は、審査が厳しくなる傾向があります。
ポイント2:【売掛金の信頼性】「その請求書は、本物で確実なものか?」
次に、あなたが売却しようとしている売掛金(請求書)そのものが、信頼できるものかを見られます。
- 請求書は実在するか:架空の請求書でないか、基本的な確認が行われます。
- 支払い期日はいつか:あまりに期日が先だと、回収不能リスクが高まるため敬遠されることがあります。
- 過去の取引実績:売掛先と何度も取引があり、これまで入金遅延などがない場合は、信頼性が高いと判断されます。
これらの事実を証明するために、契約書や発注書、過去の入金が確認できる通帳のコピーなどを求められることが一般的です。
ポイント3:【取引の健全性】「二重譲渡など、後ろ暗いことはないか?」
最後に、あなたの会社の信頼性も少しだけ見られます。
といっても、決算書の内容ではありません。
「この売掛金を、すでに他のファクタリング会社にも売ろうとしていないか?(二重譲渡)」
「経営者として、誠実な対応をしてくれるか?」
といった、取引の健全性に関わる部分です。
提出書類に不備がなかったり、面談での受け答えがしっかりしていたりすれば、問題になることはほとんどありません。
メリットだけじゃない。私が悪徳業者に騙されかけて学んだ注意点
ファクタリングは、まさに窮地を救う「命綱」になり得ます。
しかし、光があれば影もあるのが世の常です。
実は私自身、初めてファクタリングを検討した際、知識がなかったばかりに、法外な手数料を提示する悪質な業者に騙されそうになった苦い経験があります。
「情報弱者は、文字通り命取りになる」
この時の教訓から、私はコンサルタントとして、良い面だけでなく、社長が損をしないためのリアルな注意点も必ずお伝えするようにしています。
手数料という名の「時間を買うコスト」を理解する
ファクタリングの最大のデメリットは、手数料です。
銀行融資の金利に比べれば、当然ながら高くなります。
これは、いわば売掛金を期日前に現金化するための「新幹線の特急料金」のようなものだと私は考えています。
本来なら数ヶ月待たなければ手に入らない現金を、わずか数日で手に入れるための「時間を買うコスト」なのです。
このコストを支払ってでも、目の前の資金ショートを回避する価値があるのか。
そこを冷静に判断する必要があります。
あなたの会社を守る「2社間」と、手数料を抑える「3社間」の使い分け
ファクタリングには、大きく分けて2つの契約形態があります。
- 2社間ファクタリング
- あなたの会社とファクタリング会社の2社だけで契約します。
- 売掛先に知られることなく、迅速に資金化できるのが最大のメリットです。
- ただし、ファクタリング会社のリスクが高まるため、手数料は高め(相場8%〜18%)になります。
- 3社間ファクタリング
- あなたの会社、ファクタリング会社、そして売掛先の3社で契約します。
- 売掛先から「承諾」を得る必要があります。
- 透明性が高く、ファクタリング会社のリスクが低いため、手数料は安い(相場2%〜9%)のがメリットです。
- ただし、資金化までに時間がかかり、売掛先に資金繰りの状況を知られてしまう可能性があります。
緊急性が高く、取引先に知られたくない場合は「2社間」、時間に余裕があり、手数料を少しでも抑えたい場合は「3社間」というように、状況に応じた使い分けが重要です。
こんな会社は絶対に危険!悪徳業者を見抜く5つのチェックリスト
残念ながら、困っている経営者の足元を見る悪質な業者が存在します。
以下のいずれかに当てはまる場合は、絶対に契約してはいけません。
- 手数料が相場から著しく外れている(高すぎる、または安すぎる)
- 契約書の内容を曖昧にしたり、控えを渡さなかったりする
- 審査がほとんどなく、「誰でも即日OK」などと謳っている
- ファクタリングではなく、「融資」や「貸し付け」という言葉を使ってくる
- 契約書に「償還請求権あり」と書かれている(※これは偽装ファクタリングです)
特に5番の「償還請求権」は要注意です。
これは、万が一売掛先が倒産した場合、あなたが返済義務を負うという特約で、実質的には売掛金を担保にした「借金」と同じです。
健全なファクタリングは、必ず「償還請求権なし(ノンリコース)」の契約になっています。
銀行がNOでも、世界は終わらない。社長が今日からできる具体的な3ステップ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
ファクタリングが、銀行融資とは全く別の選択肢であることが、お分かりいただけたかと思います。
しかし、知識を得るだけでは、状況は1ミリも変わりません。
大切なのは、行動することです。
難しく考える必要はありません。
今日からできる、具体的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:机の中の「宝の山」を探す〜請求書リストアップのすすめ〜
まずは、あなたの会社にある「資産」を確認しましょう。
机の引き出しやファイルに眠っている、発行済みの請求書をすべて出してみてください。
そして、一枚の紙に「売掛先」「金額」「支払期日」を書き出していくのです。
これは、あなたの会社に眠る「宝の山」の地図です。
この中に、今の危機を乗り越えるための現金に変えられるものが、必ずあるはずです。
ステップ2:信頼できる「伴走者」を3社探す〜優良ファクタリング会社の見つけ方〜
次に、その宝を鑑定してくれる、信頼できるパートナーを探します。
インターネットで「ファクタリング 優良」などと検索し、最低でも3社ほど候補を見つけてください。
会社のホームページを見て、実績や手数料の目安、契約形態が明記されているかなどをチェックしましょう。
経営者の顔が見える、しっかりとした情報発信をしている会社は、信頼できる可能性が高いです。
ステップ3:必ず「相見積もり」を取る〜損をしないための鉄則〜
候補を3社見つけたら、必ずすべての会社に問い合わせて「相見積もり」を取りましょう。
同じ請求書でも、ファクタリング会社によって手数料や買取可能額は異なります。
1社だけの話を聞いて安易に決めないこと。
これは、私が悪徳業者に騙されかけた経験から学んだ、自分のお金を守るための鉄則です。
各社の対応や条件を比較し、最も納得できる一社を冷静に選びましょう。
まとめ:諦めるのは、すべてのカードを切り終えてからでも遅くありません
最後に、この記事の要点を振り返ります。
- 銀行は「過去」を見るが、ファクタリングは「未来の入金」を見る
- 審査の主役はあなたの会社ではなく「売掛先」
- 赤字や税金滞納があっても、優良な売掛金があれば可能性はある
- 手数料は「時間を買うコスト」と割り切る冷静さが必要
- 悪徳業者を避け、必ず「相見積もり」を取ること
社長、本当によく、ここまで歯を食いしばってこられましたね。
その重圧は、同じ経験をした者にしか分かりません。
しかし、どうか独りで抱え込まないでください。
銀行に断られたからといって、あなたの経営者としての価値が否定されたわけでは決してありません。
ただ、航海の仕方を少し変える時が来た、というだけのことです。
嵐の中で羅針盤が壊れても、星を読んで進む方法があります。
一つの港が閉ざされても、必ず次の港が見つかります。
諦めるのは、すべてのカードを切り終えてからでも遅くありません。
あなたはまだ、ファクタリングという非常に強力なカードを手にしているのですから。
この記事が、暗闇の航海を続けるあなたの足元を照らす、一筋の光となることを心から願っています。
大丈夫。
道は、一つじゃありませんから。
